2011/01/11

フランスのオトコとオンナの事情2

アンヌの家は、表通りから入ると二階建てに見えるが、緩やかな坂を下って裏庭に回ると三階建ての大きな邸宅なのがわかる。部屋数が多いからだろうか、人の出入りが多く、複雑な関係の人々が<家族>のように同居している。バルコニー付きの最も大きな部屋は父親が恋人と使っており、その向かいの部屋に母親と恋人が暮らす。

母親は父と別れてからずっとフランスの海外県、カリブ海のマルチニック島やアンティル諸島出身の恋人とのつかの間の恋を楽しんできた。なかにはフランス代表のサッカー選手ティエリ・アンリにそっくりな恋人もいたが長くは続かない。再婚も望んでいない。いつも父の周辺に居所を構え、父との友情が再び愛情に変わる日を待っている。

アンヌの両親が特別なわけではない。新しいフランス大統領に選ばれた(2007年5月16日に就任)ニコラ・サルコジ氏と妻セシリアも恋に生きている。2人は再婚同士で前のパートナーとの間にそれぞれ2人ずつ子どもがいて、2人の間にも息子が一人いる。

サルコジ氏は4月22日の第一回投票の際、<家族>で投票所に姿を現した。<家族>とはいえ2人の娘とは血のつながりはないが、フランスメディアは ses filles(彼の娘たち)と紹介する。日本とちがって政治家のプライベート面には触れないのが暗黙の了解だ。

サルコジの2番目の妻、娘たちの母親セシリアは2年前の春、サルコジ邸を去り新しい恋人の元へ去っていった。珍しくテレビでプライベートな質問を受けたサルコジ氏は「そっとしてくれ」と静かに答えた。エネルギー溢れるいつものサルコジ氏とは全く違う表情だった。しかし、妻不在の間、サルコジ氏は日刊紙フィガロの記者とのつかの間の恋愛を楽しんでいたという。

投票日の<家族>の姿は、選挙用パフォーマンスなのだろうか、それともサルコジ氏が待っていた妻セシリアの愛情が復活したのだろうか。

サルコジの元に妻が戻ったように、アンヌの母親は父が自分の元へ戻ってくると長い間期待していた。父が別の女性と再婚しても、恋人ができても、父とのコンタクトは欠かさない。娘アンヌの子育てを口実に父と<家族>3人になる機会をつくりだそうとする。しかし、父の隣にはいつも別の女性がいる。

軽い恋愛を楽しみながら、真剣な恋愛にかけるフランス人。家庭があっても恋愛は次から次へと始まっていく。(mainichi.jp 2007年4月27日掲載)

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