2011/01/17

フランスのオトコとオンナの事情5

アンヌの向かいの部屋は、2週間ごとにやってくる妹の場所だが、半年に一度、父の2番目の元妻が恋人と週末を過ごす。口実は、パリで過ごす娘(アンヌの妹)を送り届けるためだと言うが、実際は、宿泊費をかけずに恋人とパリで過ごすだめだ。父は<家族>全員で食事をしようと誘ったが、2人はセーヌ川のクルージングに出かけてしまった。

父はアンヌが3歳の時、2番目の妻となる女性に出会った。父は「le coup de foudre」(落雷のような一目惚れ)だったと言う。彼女は、ブルターニュ地方の小さな町の看護婦で、夫と2人の子どもとごく普通の生活をしていたが、父と出会ってから夫婦関係が冷えていくのを感じた。モン・サン・ミッシェルを散策した時、「ただの浮気ではない」、そう確信した彼女は夫に婚姻の解消を申し入れた。

大方の日本人は、夫婦関係が冷え切っても子どものために離婚しないがフランス人は違う。現代女性の傾向を調べた世論調査によると、女性の73%が離婚を選び、子どものためにふみとどまるのは19%ほどだ。(世論調査会社TNS-Sofres 2005年2月の調査)フランスでは半数以上の夫婦が離婚にふみきり、多くは女性から切り出している。

看護婦の夫は驚きと悲しみのあまり、家族の目の前で命を絶ってしまった。この時、アンヌの父は彼女の2人の幼子を自分の子どもと同じように育てていこうと決めた。

ところが、2人の間に生まれた娘が3歳になると、看護婦は患者と恋におちた。彼女は、3人の子どもを連れて新しい恋人の家へ転がり込んだ。アンヌの父は3歳の娘のそばにいたいあまり、近くにねぐらを構えた。週末、アンヌと妹が別々の場所からやってきて父の家に集った。パリ郊外の大邸宅に引っ越すまでは、父子3人の時間が確かにあった。

父の2番目の妻だった看護婦は、公私をはっきり区別し、プライベートでどんな困難に出会っても仕事をやめない。父と離婚後、患者たちと同棲を繰り返し、子どもたちを伴って住処を点々としているが、仕事のキャリアは着実に積み上げている。フランスの25歳から49歳の女性は8割以上が仕事をしている。(国立統計経済研究所Insee 2005年の資料)仕事と家庭の両立は可能だ。

彼女の3人の子どもたちは、母親の生き方に疑問を投げかけたことはなく、それぞれの道を究めている。彼女も迷いはなく「家族を犠牲にした」などとは微塵も感じていない。

(mainichi.jp 2007年5月18日掲載)

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