夏木マリさんが婚姻届を出さない事実婚を「フランス婚」と呼んだように、結婚しないで共同生活を送っているフランス人カップルは数多い。フランス語では、コンキュビナージュ(Concubinage)またはユニオン・リーブル(Union libre)と言い、役所に申し出て「同棲証明書」を発行してもらうこともできる。
パリ郊外に住むマリ=クリスティーヌ(46)は薬品関係の研究所に勤める公務員、ダニエル(46)との同棲生活は23年になる。敬虔なカトリック教徒の家庭で育ったダニエルは結婚を望んだが、彼女は躊躇。結婚したら夫の姓を名のるよう期待されたからだ。フランスは法的に夫婦別姓が認められているので、結婚しても姓を変えなくてもいいはずだ。
一緒に住んで2年目に妊娠、彼女は結婚に踏み切れない。コンキュビナージュを続けたいという希望をダニエルは受け入れた。結婚しなくても子どもに不利益が生じないと判断したからだ。2人は婚姻届を出す代わりに、役所に同棲証明書を出してもらった。
マリ=クリスティーヌによると、証明書の申請は極めて簡単だったという。戸籍抄本と手書きの申請書を準備した。安定した共同生活が継続しているという証明は、連名にしてあるガス会社からの請求書で充分だった。役所によっては証人を同伴しなければならないが、彼女たちは必要なかった。
コンキュビナージュは戦後増え始め、判例や立法で認められてきた関係だ。すでに1972年の判例は、結婚したカップルから生まれた子どもと婚外子の平等を認めている。家族手当も同じように受けられる。1999年にパックス(市民連帯契約)ができた時、初めて民法に規定された。
ただし、結婚やパックスのように所得税の共同申告はできない。申告書の分類も「独身」になる。安定した収入を得ているマリ=クリスティーヌは、税金優遇措置を理由に結婚やパックスに変えるつもりはない。2人の娘は、彼女とダニエルが一人ずつ扶養する方法で申告することができる。書類上は2つの別々な世帯になるけれど、4人は家族である。
2人は共同名義で一軒家を手に入れた。いま、マリ=クリスティーヌは遺言を残そうと考えている。コンキュビナージュは、相続や贈与に関して結婚と同じようには見なされない。娘たちに遺産相続のトラブルが生じないように策を講じておく。
「冷たい視線を感じたことはない」、2人はコンキュビナージュという形に満足している。
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