2011/02/23

フランスの家族の形~義理の親

出生率と離婚率の高いフランスでは、子連れ同士の再婚や同棲も珍しくない。親の恋人や再婚相手と暮らす新しい家族の形を「複合家族」といい、フランスではおよそ200万人の子どもたちがこの環境の中で生活している。複合家族の増加にともない、継父や継母ら「義理の親」の権利を法律で定めようという動きが出てきた。

ル・モンド紙に意見を寄せたダティ法務大臣によると、「継父・継母は、第二の父親、母親としてフランスの家族のなかで大きな役割を果たしているにもかかわらず、フランスの法律には、その存在や権利を規定するものがない。」同居相手の子どもを学校に迎えに行くためには委任状を提出しなければならず、病院へ連れて行くためには同居相手の許可が必要である。ダティ法相は、こうした事前許可がなくても日常生活に必要な行動ができるように法制化に取り組もうとしている。

「義理の親」の規定については、サルコジ大統領も前向きだ。去年の夏、労働大臣に検討するよう指示し、「全ての家族を支え、助けたい」とメッセージを送った。サルコジ大統領自身、複合家族に暮らしてきた。前夫人のセシリアさんとは、彼女の娘2人とセシリアさんとの間に生まれた息子、常に同居していたわけではないが自分の息子が2人。カーラー夫人とは、彼女の息子とともに新しい家族をつくっている。複合家族が抱える問題は他人事ではないだろう。

一方、SOS PaPaというフランスのパパたちの組織は、法制化に異を唱えている。「学校への送迎のような日常の問題は、法律で定めるまでもなく各自が解決してきた。法制化により生みの親と育ての親が争う危険が出てくる」。SOS PaPaによると、別れたカップルの9割で、父親が子どもに会えるのは隔週末のみで、時とともに子どもに会う機会が減っている。日本と同じで、母親が子どもの親権を得ることが多いフランスで、子どもと暮らしたくても暮らせない、会いたくても会えない父親がいる。

娘は別れた妻と暮らし、自らは新しい妻の息子と暮らすアラン(52)は、「子どもの教育の義務を果たすのは実の親。長女とは隔週末しか会えないが、躾や教育は自分の役目」だと言い切る。一緒に暮らしている妻の息子に関しては、妻の元夫とも友好的な関係を保ちながら成長を見守っている。妻の元夫が「親」としての役割を果たせるよう尊重し、自らは「代理の親」だと表現する。あくまでも「親」は生物学上の親であり、「義理の親」の権利は学校の送り迎えなど限定的なものにとどめるべきだと考えている。

家族の形が多様化したフランス。「義理の親」の規定を巡る議論は続きそうだ。

(mainichi.jp 2008422日掲載)

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